第6話『リィフの告白と、ディアの封印』

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それに対する魔王の答えは、アイリが生まれる前から、すでに決まっていた。 魔王は、『娘ができたら、ディアにやってもいい』と、遠い昔にディアに宣言していたのだ。 それは、王妃アヤメに片思いをしていたディアに対する、魔王の情けだったのか……? 今となっては、それがアイリとディアの運命の恋に繋がったのかは分からない。 「いいぜ、好きにしろ」 「はい。ありがとうございます」 短いやり取りではあるが、これで結婚の許可を得た事になる。 願いが通って、ようやく肩の力を抜いたディアだが、魔王はニヤリと笑って衝撃の一言を放つ。 「てか、『封印』って何の事だよ?」 「……はい?」 突然の魔王のすっとぼけ発言に、ディアは意表を突かれた。 「以前、魔王サマの魔法で、私の『恋愛感情』を封印して頂いた件ですが」 「ハァ?記憶にねえなぁ~」 わざとらしい魔王の口調に嫌な予感がしたディアは、何かに気付き始めた。 両手の拳を握りしめて、全身がプルプルと震えている。 恐怖でも悲しみでもない。怒りに震えている。 「魔王サマ、どういう事でしょうか。確かに封印しましたよね?」 ディアが、こんなドスの効いた声で問い詰めるなんてレアだ。 クールなディアが感情的になるだけでも珍しい。 「あぁ、アレは封印した『フリ』だ。テメエが封印してくれって、うるせえからなぁ」 「封印してなかった、という事ですか……?」 「恋愛感情だけを封印する魔法なんてあるかよ。それにオレ様は、未成年のアイリに手を出すなとは言ってねえぞ」 魔王自身は、17歳のアヤメを娶ったからだ。 魔王にとって年齢は問題ではなく、むしろ学生であっても自由な恋愛を推奨していた。 「で、では……私の恋愛感情というのは……」 「テメエが勝手に我慢してただけだろ。いつ理性が崩壊するか見ものだったぜ、ヒャハハハ!!!」 なんという極悪な笑い方をする悪魔だろうか。 魔王はディアの恋愛を封印したフリをして、アイリに恋のアドバイスをしていた。 それは、いつかディアの理性が負けて、アイリに手を出してしまうであろう様子を見て楽しんでいたのだ。 ……結果的に、ディアは苦しみながらも今日まで理性を保った訳だが。 そんなディアの苦悩でさえ、天下の魔王にとっては娯楽でしかなかった。 「ま、ま、魔王サマぁーーーー!!!」 「お、なんだ、反抗的だな。オレ様に刃向かう気か、面白ぇ」 「今日という今日はぁーーーーッ!!」 この時ばかりは、本気で下克上を考えたディアであった。
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