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上目遣いで放たれるそれは、アイリの可愛さが最大限に付加された『おねだり』。
「ディア、お願い……だめ?」
「いえ、その……アイリ様はもう高校生ですし、さすがに、それは……」
少しは大人扱いをしてくれているらしい。
明らかに困惑しているディアに対し引く事なく、アイリはさらに押しを強める。
ここでアイリは、魔王の助言を思い出した。
「えっと……これは、私の『命令』なの……」
『命令』だと言ってしまえば、ディアは決して逆らえない。
ディアは、魔界の王族全員と『絶対服従』の契約を交わしている。
ディアにとっては当然、アイリの命令も絶対。
本当はアイリも、強制的にディアを服従させるような事はしたくない。
多少の罪悪感もあるが、ここで強く押さなければ、いつまでもディアには近付けない。
とは言っても、アイリの上目遣いの『命令』という言葉は、可愛らしい『お願い』にしか聞こえない。
真面目なディアは、礼儀正しくアイリの正面で深々と頭を下げた。
「はい。承知致しました」
それは堅苦しい態度ではなく、優しい微笑みでの同意であった。
そこにディアの感情が見えたアイリは嬉しくなって、そのまま先にディアのベッドに上がる。
そして躊躇する事なく布団の中に入り込む。
(ふふ……ディアのベッド、ディアの布団、ディアの匂い……)
アイリは布団の中でゴロゴロと転がって、全身でディアを感じた。
そんなアイリをしばらく見ていたディアが微笑みながら近寄る。
「アイリ様、そろそろ私も失礼致します」
そう言ってディアもベッドに上がって布団に入り、アイリの隣に寝る。
ディアが一人で寝るためのシングルベッドは、二人で寝るには狭い。
だからこそ、二人は必然的に密着して寝るしかないのだ。
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