第1話『アイリの魔法と、ディアの補習』

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上目遣いで放たれるそれは、アイリの可愛さが最大限に付加された『おねだり』。 「ディア、お願い……だめ?」 「いえ、その……アイリ様はもう高校生ですし、さすがに、それは……」 少しは大人扱いをしてくれているらしい。 明らかに困惑しているディアに対し引く事なく、アイリはさらに押しを強める。 ここでアイリは、魔王の助言を思い出した。 「えっと……これは、私の『命令』なの……」 『命令』だと言ってしまえば、ディアは決して逆らえない。 ディアは、魔界の王族全員と『絶対服従』の契約を交わしている。 ディアにとっては当然、アイリの命令も絶対。 本当はアイリも、強制的にディアを服従させるような事はしたくない。 多少の罪悪感もあるが、ここで強く押さなければ、いつまでもディアには近付けない。 とは言っても、アイリの上目遣いの『命令』という言葉は、可愛らしい『お願い』にしか聞こえない。 真面目なディアは、礼儀正しくアイリの正面で深々と頭を下げた。 「はい。承知致しました」 それは堅苦しい態度ではなく、優しい微笑みでの同意であった。 そこにディアの感情が見えたアイリは嬉しくなって、そのまま先にディアのベッドに上がる。 そして躊躇する事なく布団の中に入り込む。 (ふふ……ディアのベッド、ディアの布団、ディアの匂い……) アイリは布団の中でゴロゴロと転がって、全身でディアを感じた。 そんなアイリをしばらく見ていたディアが微笑みながら近寄る。 「アイリ様、そろそろ私も失礼致します」 そう言ってディアもベッドに上がって布団に入り、アイリの隣に寝る。 ディアが一人で寝るためのシングルベッドは、二人で寝るには狭い。 だからこそ、二人は必然的に密着して寝るしかないのだ。
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