第2話『アイリの不調と、ディアの心配』

1/5
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

第2話『アイリの不調と、ディアの心配』

アイリは今日も補習を受けるため、放課後の『魔法室』の引き戸を開ける。 『魔法室』とは魔法の授業を行うための教室で、雰囲気は『理科室』に近い。 しかし教室に足を踏み入れた瞬間、いつもと違う様子にアイリは驚きとどまる。 いつもなら、まだ誰もいないはずの教室の真ん中の席に、誰かが座っている。 金髪のショートボブで、悪魔特有の褐色肌の少女。見た目はギャルっぽい。 その少女はアイリの方を向くと、明るく笑いかけてきた。 「こんにちは!今日は一緒に補習、よろしゅう頼んます!」 思わず苦笑いを返してしまったアイリの、心の第一声は…… (え……誰!?) 同じ制服を着ているから生徒なのは分かるが、見覚えがない。 それに悪魔なのに異世界の方言を使うのか、馴染みのない口調に少し引いてしまった。 気弱なアイリはビクビクしながら、その少女の隣の席に着席した。 どうやら今日は、彼女も一緒に補習を受けるようだ。 「ウチはリィフって言います!アイリ様とはクラスがちゃいますから、初めまして、やね!」 補習の割には、やたら元気でテンションが高い。 この学校は中学までは1クラスしかなかったが、高等部からは新規入学生も受け入れて、クラスが複数ある。 アイリは王女なので誰からも認識されるが、アイリは他のクラスの生徒まで把握できない。 「あ、よろしくね……。あと、敬語じゃなくてもいいよ……」 「さよか?ほな、ウチのことは、リィフちゃんって呼んでな!」 人懐っこい笑顔で話しかけてくる活発そうなリィフは、大人しいアイリの性格とは正反対。 そのせいか、なかなかアイリは、そのノリに乗り切れない。 それよりも、アイリの中では別の何かの感情がモヤモヤと渦巻いていた。 (ディアと二人きりの補習の時間だったのに……) 今まで、補習を受けなければならないほどの赤点を取る生徒が、アイリ以外にいなかったという事だ。 それはそれで不名誉なのだが、アイリはディアを独占できる補習の時間が好きだった。 そんな心を知らないリィフは隣のアイリに体を寄せて、急に小声で話しかけてきた。 「アイリ様は、ディア先生と付き合ぉてんの?」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!