22人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話『アイリの魔法と、ディアの補習』
ここは、悪魔が生きる世界、『魔界』。
普段は魔法で隠しているが、悪魔にはコウモリのような羽根がある。
そして魔界には『魔獣』という生物も生息している。
人間界との違いはそのくらいで、日常は変わらない。
その魔界を統べる悪魔『魔王』と、人間である王妃との間に生まれた、王女アイリ。
栗色のボブヘアに、栗色の瞳。母親に似て落ち着いた色合いと性格だが、童顔なので幼く見える。
悪魔特有の褐色肌ではなく色白だが、悪魔特有の黒いコウモリの羽根を持つ。
この時のアイリは、魔界の高校3年生。
王女でありながら気弱で大人しい性格のアイリは、幼い頃からずっと恋をしている。
その恋の相手とは……
ここは、魔界の学校『オラン学園』、高等部。
その名の通り、アイリの父である魔王オランが設立した学校だ。
放課後の教室で、アイリは今日も意中の『彼』と二人きりで密会中。
「それでは、『魔法』の授業の補習を行います」
そう言って教壇に立ったのは、紳士な軍服スーツ姿のイケメン教師。
見た目は20歳手前くらいの青年で、ブルーグリーンの爽やかな髪に金色の瞳。
彼こそが、この学校で『魔法』の授業を担当する教師、ディア。
そして、この補習を受けるたった一人の生徒は、アイリ。
教卓の目の前の机に座るアイリと、教卓のディア。まさにマンツーマン。
アイリは補習という自らが置かれた状況を忘れて、思わずニヤニヤが止まらない。
(ふふ……ディアと二人きり……今日もディア、カッコいい……)
そう、ディアこそがアイリの意中の人。だからこそ、こんなに嬉しい事はない。
アイリは、この補習の時間が大好きなのであった。
「アイリ様、最近は特に魔法の調子が優れないようですが、いかがされましたか?」
ディアの本職は魔王の側近であり、アイリとは『教師と生徒』の関係である前に『主従関係』。
そして王女の世話役でもある彼は、アイリを赤ん坊の頃から面倒を見て育ててきた。
そんな親心もあって、補習が必要なほどに成績が落ちてしまったアイリを心配している。
「ディア、ごめんなさい……」
アイリは口では謝りつつも、ディアと二人きりの補習をむしろ喜んでいる。
だからと言って、わざと赤点を取った訳でもない。
近頃、魔法が上手く制御できなくなってきたのも事実で、その理由はアイリ自身にも分からない。
最初のコメントを投稿しよう!