Day-Dream Believer

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Day-Dream Believer

 僕は学校の先生が言うところの、「出来の悪い」生徒だった。 「どこを見てんのか知らないけれど、ぼうっとして授業に身が入らないね、君は」  ほんとうは何を見ているか、説明しても無駄だから返事をしないでいると、たいていの教師は重ねて質問をしなかった。時間の浪費だと思ったのだろう。  たったひとり、現代国語の教師だけがしつこく聞いてきた。僕はこう答えた。 「なんて言えば……、別の世界を見ています。たぶん僕の空想でしょうけど」 「白昼夢(デイドリーム)の一種かもしれないな。いつも同じ景色を見るのか?」  僕が覗き見るのはファンタジー世界のある村で、登場人物もたいてい決まっていた。誰かの後について行って何が起こるか眺めたり、のどかな風景にときおり顔を出す風変わり(エキセントリック)な生き物などを観察したりして楽しんでいる、と返事をした。 「それ、小説にしたらどうだ? ライトノベルでもファンタジーでも、君なら書けるんじゃないか」  そんなきっかけで、僕は作家になった。教師におだてられ、そそのかされて半信半疑で書き上げた作品が公募で佳作をもらい、たまたま書籍化されたからだ。
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