5人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はたぶん、昼下がりの書斎で居眠りしたのだろう。
「ヴェガ、ヴェガ」
夢の中で声がした。
うっすら目を開けると、目の前にはゆっくりと渦を巻く靄を背景に、アルタイルが立っていた。彼の肉声を聞いたのは、初めてだった。
「どうして君が居るんだ? 直接、会えるわけがないのに」
彼は肩をすくめて、「俺には分かりません」と言った。
「彼女に、『これからヴェガが来る』と聞いただけなので」
「誰のこと?」
「その人は記憶を消されています。答えを求めても無意味ですよ」
高く澄んだ女性の声がした。顔を向けると、そこにオリナスがいた。
「初めまして、ヴェガ。私たちの世界の神さま」
呆然とする僕に、オリナスは深々と頭を下げた。
「ご来臨の栄を賜り、恐悦至極に存じます」
「堅苦しいのはやめてよ。苦手なんだ」
では失礼、と断って、少女は話し始めた。
「あなたは白夢幻世界の創造主です。でも、実際に訪れることは不可能でした」
「あくまで僕の空想だから。実在しない世界だし」
「だから、ここでお会いすることとしました」
僕は耳を疑った。まるで彼女に誘われたかのように聞こえたからだ。
「ここはあなたの住む世界ではなく、私たちの世界でもありません」
僕は主人公が白夢幻世界から追放される筋書きを作り上げ、それを実現するための力をオリナスに与えた。
そのおかげで登場人物と出会えるなんて、夢にも思わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!