Day-Dream Believer

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 マロード・ヴェガ、というのが僕のペンネームだ。作家は物語を織りなすのが仕事だから、日本でいう織女星、こと座のアルファ星、VEGA(ベガ)から考えた。自分で言うのも口はばったいが、世間では「白夢幻世界(ピュア・ファンタジア)シリーズ」のヴェガ先生はまあまあ売れっ子と認識されていた。  僕の作品の特徴は、「まるでその世界が実在しているのではないかと疑うほど」確固とした設定と、「読者がその場に居合わせているような」臨場感で、デビュー作とは思えないほど作り込まれている、と評判だった。実際に視覚として目撃した空想世界を描写しているのだから当然だ。  だからといって空想の世界を見てきたまま描いて、それだけで成功したわけじゃない。シリーズを書き始める前に書籍化されたのは受賞作を含む短編集で、評論家からは厳しい評価を受けた。 「文章は美しく、幻想的な世界観は見事と言ってもよいが、いかんせん物語に起伏がない。退」  僕が覗いていた空想世界は争いごとや怪奇現象のない、のどかな魔法世界だった。仕方のないことと言えばそれまでだけど、続編をシリーズ化する予定でいたから、「このままでは一発屋になってしまい、作家としての未来はないんじゃないか」と悩んだ。
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