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Dreams Come True
僕はデビューしてわずか半年で、早くも行き詰まってしまった。僕が見る空想世界は怪物のいない平和な世界で、多くの読者の求めるハイファンタジーにしようとしても、RPG的な展開など起こりようがないからだ。
「世界征服をたくらむ魔王を登場させればいいじゃない」
担当編集者は簡単に言ったけれど、僕が目撃したことのない要素を作品に加えようとすると、持ち味であるしっかりとした世界観や、まるで見てきたように現実的な情景描写が出来なくなった。
僕はどうしてもこの目で、あるいは夢や白昼夢で見た世界でないと、文章に現実味が出せないタイプのようだ。
「どうすればいいか分からなくなりました」
僕は母校を訪ね、作家の道を拓いてくれた恩師に相談した。
「何度も繰り返し見るような夢は、つよく願えば内容を書き換えられると聞いたことがある。試してみる価値はあるんじゃないか」
現国の教師、今は副校長先生のアドバイスは一考の価値があった。もしもあの世界が僕の空想の産物であり、創造物だったら、ただ見ているだけではなくこちらからアクセスして、世界に何らかの影響を与えられることが可能かもしれない。
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