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この作品をこのまま一生涯書き続けられるかもしれない、僕がそんな見とおしを持ち始めたころのことだった。担当編集者が、そのあまい夢に深刻な衝撃を与えるひと言を吐いた。
「アニメ化も決まったし、そろそろ次のシリーズなんて書きたくない?」
考えてもいないことだったので、僕は分からないふりをした。
「次のタイトルは、『異相世界の悪魔編』ですよ」
「先生、そうじゃなくって新作ですよ。また新しい世界を創造してください」
編集者によれば白夢幻世界は売れているけれど、そろそろ限界だそうだ。もともと長大になることを想定した作品ではないため、伏線も何もなく、エンディングの構想もない。実際のところいい加減、読者に飽きられるおそれがあった。
「分かりました。検討します」
僕は呆然としつつも、とりあえず前向きの返答をした。
口には出さなかったが、どうやって白夢幻世界とは異なる幻想世界をのぞき込めばいいのだろうか、と内心では途方に暮れていた。
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