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くノ一探偵
真夏の日差しが容赦なく降り注いでいた。
夏休みに突入すると一層、暑さが増したようだ。
ボクの名前は風雅刑事。二十歳。
刑事と言う変わった名前だがごく普通の大学生だ。決して職業が刑事というワケではない。
苗字も風雅なので昔から風魔忍者の末裔かと言われるが、いっさい関係がない。
夏休みになっても彼女がいないので退屈な毎日を送っていた。
暇つぶしにリビングでゲームをやりながら寛いでいるといきなりつむじ風のように木の葉が舞った。
まるで忍法『木の葉隠れの術』のようだ。
「なッ?」
やがて木の葉の中に三人の人影が映ると、女忍者、三忍娘の姿が現われた。
「な、なんですか。あなたたちは?」
あまりにも突然なことに、ボクは目の前に現れた彼女たちに訊いた。
「やぁやぁ、風魔一族の者だな。故あって、成敗する。覚悟!」
だが女忍者、三忍娘は挨拶もなくボクの部屋へ乗り込んできて宣告した。
「えェ……、故あってって、何?」
咄嗟に、ボクは上手く対応が出来ない。
三人とも可笑しな忍者のコスプレをしていた。
さらにひとりは手に自撮り棒を持ち、もう一人は絵筆を、そしてもう一人はパンダを抱えていた。いったい何を考えているのか、ボクにはわからない。
「いやいや、覚悟って何なんですか。あなた方はどこから入って来たんですか?」
ボクは必死に逃げ惑った。
「われら甲賀の女忍者三忍娘。咲耶、見参!」
ライブ配信でもしているのか、自撮り棒で撮影していた。
「同じくネム、推参!」
「同じくシャオラン、参上!」
まるで三人ともアニメの美少女戦士のように派手なポーズをつけた。
「ううゥ……」マジか。
小学生じゃあるまいし。
「三忍揃って、忍ばない! くノ一探偵。すべての謎はこのくノ一探偵 咲耶に解かれたがっているのよ」
美少女は宣言した。なんとも大胆不敵なセリフだ。
「ううゥッ、忍ばない! くノ一探偵ですって?」
何なんだ。この子たちは。
「さァ、命が惜しければ、今すぐ目の覚めるような連続殺人事件を出してみろ!」
咲耶は背中の刀を抜き、無理難題をボクに押しつけた。
「えェ……?」目の覚めるような連続殺人事件を。
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