家柄

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家柄

パーティーは大成功だった 千代も いつもの気さくなお客様の雰囲気とはうってかわって うぐいす色の京友禅の訪問着に プラチナを織り込んだ更紗模様の袋帯をしめ 社長である 城ケ崎登の横にスッと背筋をのぱし、 凛として立つ姿は… 気高く、気品に溢れ 近寄りがたいオーラを醸し出していた 社長の城ケ崎登は 少し気難しそうで、とても頑固な人のように見受けられた それでも 少し栗色がかった髪で スッとした鼻筋は、若い頃はかなりの美男子であっただろうと見受けられた 時々、 眉間にシワを寄せる仕草で まわりの御付きの人々がピリピリと緊張する様子から…普段はかなりのワンマンのように思えた そんな登が 千代をみる時だけは 蕩けそうな眼差しを送り 千代もまた登に優しく微笑み返す姿に 美月はときめいた… 『正真正銘のセレブリティ…』 村上が美月の横で呟いた 『にわかセレブと違って品があるわ…』 村上もまた うっとりと壇上の登と千代をにみとれて言った 村上もまた 二人の姿に感動し…ときめいているようだった ただ美月は 世界の違う人達の傲慢さしか知らない環境で生きてきた… だが この家族には 傲慢の欠片も感じることはない… むしろ 暖かい… もしも… 施設ではなく… 普通の家庭に育つことができたなら… きっと…こんな風に笑い合えるのだろうなと… 憧れにも似た感情が入り交じっていた
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