16人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ―――新しい季節―――
それから、いくつもの季節が野原を過ぎ行きました―――
夏のある日、キリギリスが草の上で 寝そべっていると、アリたちがぞろぞろ歩いてきました。
「よう 坊主! 汗びっしょりで 頑張ってるねぇ、何してんだい?」
キリギリスは近くを通った小さなアリに声をかけました。小さなアリは今日が初めてのお仕事の日です。
「あ……こんにちは……えっと……僕たちは巣穴に食べ物を運んでいるんです」
「ふーん……んじゃ……」
キリギリスは起き上がると、バイオリンをケースから取り出しました。
「そんな 頑張り屋のお前ぇらへの 応援を……この曲に乗せて……」
軽快なバイオリンの音色が野原に響き始めると、食べ物を運んでいたアリ達の足音が段々、軽やかなステップに変わっていきます。
「ようリッキー! 今日も演奏ありがとよ! 荷物運びが楽しくなるぜ!」
何匹かのアリがキリギリスに声をかけながら荷物を運んでいきます。
「隊長! ちょっとだけ時間良いですか?」
若いアリ何匹かが荷物を地面に下ろしました。
「よし! 一曲だけだぞ! リッキー、頼むぜ!」
キリギリスのバイオリンの調子が、さらに激しく軽やかに変わります。若いアリ達は笑顔でタップダンスを始めました。息ピッタリのグループダンスや個人ダンスの足音が草原に鳴り渡ります。
まったく……誰に教わったのか知らねぇが、面白ぇ巣穴もあったもんだな……
コイツら……ホント良い顔してやがんぜ!
笑顔で踊り、楽しそうに荷物を運ぶアリ達を見ながら、リッキーはだんだん嬉しくなって来ました。
そんな思いを乗せたバイオリンの音色は、∞に広がる天高くまで響き渡って行きました ―――
最初のコメントを投稿しよう!