第2話 お約束

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第2話 お約束

 巣に戻ってからも、アントン達の仕事は何時間も続きます。アリ達はいくつかのグループに分かれ、一日中交代で仕事を続けているのです。 「よし! 交代だぞぉ」  アントン達のグループの仕事も、ようやく交代時間になりました。それぞれが自分の家に帰って行きます。 「ようアントン! どうだった?」  疲れた足を引きずるように歩いていたアントンは、 途中(とちゅう)で父アリと一緒(いっしょ)になりました。 「あ……すごく (つか)れたよ……。お父さん達って毎日こんなに (はたら)いてたんだね……」 「そうか、疲れたか? まあこれから毎日しっかり働けば、その内に ()れるさ!」 「これから……毎日……。うん! 僕、 頑張(がんば)る!」 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 「……そう言えば今日、僕、変な人に会ったよ」  食事の席で、アントンが母アリに 報告(ほうこく)します。 「変な人?」  母アリが (たず)ね返すと、すぐに父アリが 面白(おもしろ)くも無いという声で答えました。 7dbda81e-7d90-4d60-88b0-c61e641a44de 「あのキリギリスだよ! まったく……いつもいつもダラダラ()ごしてる、なまけ者の 大馬鹿野郎(おおばかやろう)さ!」 「ギリィさんって言うんだって」  アントンが 何気(なにげ)なく口を(はさ)んだ 途端(とたん)、父アリはテーブルを「ドン!」と (たた)きました。 「アントン! 良いか? アイツの名前なんかもう口にするな! 外でアイツに会っても話なんかしちゃダメだぞ! 近づくんじゃない! アレはダメ虫なんだからな!」 「……ダメ虫?」 「そうよアントン……」  父アリの (いか)りをフォローするように、母アリが(やさ)しく顔を()けます。 「働きもしないで毎日遊んでばかりのダメ 昆虫(こんちゅう)。私たちはちゃんと働いてるから食べ物にも (こま)らないし、生きていく 心配(しんぱい)をしないですむでしょ? でもああいうダメ昆虫はその 日暮(ひぐ)らしで、明日のことを考えないからいつか 後悔(こうかい)する日が来るのよ……『ちゃんと働いてれば良かった』って。あんな大人になっちゃダメよ?」 「……うん」  アントンは両親の話をキョトンとしながら聞きました。とにかくギリィとはお話をしちゃいけないってことと「あんな大人」にならないように毎日しっかり働かなきゃと考え、アントンは (うなず)きました。
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