ヴォーハム魔法学校

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ヴォーハム魔法学校

 中学校から魔法学校に入ってくる生徒はとても少ない。  大抵は親が魔法使いなので、小学校から入学してくる。  それも、僕は中学からの編入なので、そのための試験もいろいろあった。  とりあえず、前の中学校で酷い目に遭っていることをようやく両親に話せた僕は、両親の手元に届いていた小学校入学の時の魔法学校の入学案内を見せてもらった。  小学校に入る時には、魔法学校から入学案内が来るなんて驚きすぎてとてもじゃないけど、入学を考える事は出来なかかった。  そう。僕の両親は魔法使いではないので、僕も普通の学校に入るのが普通だと思っていた。  僕も、魔法は何となく使えたけれど、普通の人の前で使うのは、なんか違うな。と思っていたので、前の中学校を辞めるまでは人の前では使わなかった。  ヴォーハム魔法学校に問い合わせた所、編入だと、多少準備に時間がかかるだろう。と言う事と、人間の前で魔法を使ってしまったことは厳罰に処されることもあるが、今回は知らずにやったことだし、罰を与える期間を、編入までにかかる期間にしてくれると言う頭の柔らかい措置をしてくれた。  編入の条件は、まず、当然だが、小学校卒業程度の魔法ができる事。  編入試験までには1か月の猶予が与えられた。  僕が中学校で魔法を使ったのが夏休みが開けたばかりの9月だったので、中学一年生に編入することには決まっていた。  ヴォーハム魔法学校は9月が新学期。みんなまだ小学校から中学校にあがったばかりの生徒ばかりだ。  でも、みんな小学校から寮に入っているので顔なじみ。  僕はヴォーハム魔法学校でも、寂しい思いをしそうで結局学校を変えてもダメなのかも。とちょっと落ち込んでいた。  まずは、みんなが小学校に入学するときにそろえたものを買わなければいけない。  そんな魔法に関する物がどこで売られているかもわからない僕には、なんと隣の家のグラツが教えてくれると言う。  あぁ、僕の名前はマイルという。紹介が遅れてしまって申し訳ない。  グラツは幼稚園まで一緒だったが、小学校からは違う学校に行くと言っていたので、私立の一貫校にでも入ったのかと思っていた。  小学校からヴォーハム魔法学校に入学していたと聞いて、驚いたのと、知り合いが一人でもいてくれたので、嬉しくなった。  グラツは普段は魔法学校の寮にいるのだが、学校側からの特別措置で、家から学校に通ってよいと許可を出され、マイルの為に入学準備を手伝う事になった。 グラツ「なんでまたこんな時期に編入?小学校の卒業程度までだって、一か月じゃ試験の準備結構大変だぜ?」 マイル「あんまり周りには言いふらしてほしくないけど、いじめにあったんだ。それで、あまりの事に耐えかねて、教室で魔法を使って机を飛ばしたり、花瓶から延々と水が出るようにして、みんなに掛けたりした。」 グラツ「へぇ。あぁ、それで罰則機関と準備期間を帳尻合わせて一か月後の編入か。魔法学校に入学した後だったら退学だぜ?」 マイル「人間の前で魔法を使うってそんなにいけない事なの?」 グラツ「種類が違うものはなるべく相いれない方がいいんだよ。大人たちはこっそり色々と情報を交換しているけれどね。さて、まずは買い物だね。」 マイル「いったいどこに行けば魔法の道具なんて売っているのさ?」 グラツ「お金は持った?」 マイル「あぁ。人間界のお金に換算された表を見て確認したから大丈夫。」 グラツ「じゃ、行こうぜ。」  マイルはグラツに付いて歩いて行った。  駅前にでると、普段使わない様な小路に入った。  行き止まりに見える場所で立ち止まった。  グラツは小さな声で何かをつぶやくと、そのまま小路を進んだ。  行き止まりに見えていた小路の先にいつの間にか道が見えた。 グラツ「な。実は繋がっているんだけど、魔法で見えなくなっているだけ。」 マイル「はぁぁ?駅の裏に魔法のお店があるんだ。」  驚きながらも、授業で必要な魔法薬の鍋。教科書を買った。  杖は学校で支給されると言う。  なんでもその子供に合った杖を使わないと魔法がうまく使えないそうだ。  学校の購買部に、目利きの職人がいるのでそこで支給してもらうし、もし、壊れた時にはそこで修理してもらえることもある。  もしあまりに酷い損傷だと、二本目からは自分で買わなければいけないので、杖を折らないようによく注意された。  必要なものを揃えてからは、毎日が勉強だった。  毎日のようにグラツはマイルの家に来て、魔法を教えた。  大抵の小学校で習う魔法はマイルは使う事が出来たので、グラツも少しほっとした様子だった。  だが、魔法薬だけは練習しなければいけない。そもそも材料が人間の家にはない者ばかりだったので、魔法薬の練習は申し訳ないがグラツの家ですることになった。  グラツの家は両親とも魔法使いで、外からは全く普通の家に見えるのだが、中に入ると、色々なことが違っていた。  勝手に料理している包丁。勝手に掃除している掃除機。  グラツの母親は、パッと現れると、魔法薬の材料を何もないところから『ほいっ』と出すと、自分は仕事があるからと、パッと消えてしまった。 グラツ「悪いな。おふくろは教師なんだよ。いると余計なこと教えちゃいそうだし、なるべく手を貸さずに学校にいるようにヴォーハム魔法学校の校長から言われているんだ。」 マイル「え?お母さんは同じ魔法学校にいるんだ。」 グラツ「あぁ。でも、授業ではかち合わないように先生方も気をつけてくれているから大丈夫さ。それより、君のおかげで一か月は家で過せるから嬉しいよ。」 マイル「え?寮って嫌な所なの?」 グラツ「あぁ、そんなことはないさ。でも、まだ俺も中学一年だろ?家の方が恋しいこともあるかな。特に食事はね。学校の食堂の食事、美味しいんだけどさ、やっぱりおふくろの味の方が嬉しいって言うのかな。今作っている料理も俺の大好物のシチューだしね。」  そして、二人はマイルの遅れている魔法薬の実技を黙々と練習した。  マイルは勘がよく、両親ともに人間で、たまに魔法使いが出る家の例を違えず、本人はとても優秀な魔法使いであることがグラツには分かった。 グラツ「マイルが来たら俺、必死で勉強しないと抜かれちゃうな。お前は実に優秀だと思う。俺、一応学年トップをキープしているからな。」 マイル「え?すごいね。僕なんて魔法の小学校も出ていないんだからグラツを抜かせるわけないよ。勿論、入学で来たら頑張って勉強はするけどね。」  グラツは内心焦りながらも、気のいい子供なので自分が知っている小学校の魔法については、実技だけではなく、学科もしっかりと面倒を見てくれた。  さて、いよいよ編入試験だ。  
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