1-1 追憶

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 意識を引き戻されるようにして音の出処を探る。すると、部屋の中央前方に設えられた巨大モニターにいつの間にか人の姿が映し出されていた。眼鏡で白衣で医者のような印象を与えるが、それ以外にはあまり特筆すべき点のない、どこにでも居そうな中年男だ。 「皆さん、この度は当施設にようこそお越しくださいました」  スピーカーから電子管を通して男の声が届く。思いの外甲高いテノールで、男はここの責任者だと名乗った。 「皆さんもきっと、今日の日を待ち侘びていたことでしょう。規定通り、これから皆さんにはこの施設で兵士となる為の教育を受けてもらいます」  会場内にピリリと緊張感が走った。  そうだ。遂にこの時が来たのだ。この日、国中の孤児院出身の十八歳の若者達が招集された。予め定められた約束事だった。孤児院で育った子供達は、高校を卒業し成年を迎える歳頃になると、兵士となる為に国の特殊な教育機関に送られる。  それというのも、()()()()()を与える為だという。
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