1-1 追憶

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 後方から妙な声が聞こえた。張り詰めていた気がそちらに逸らされる。見ると、三列ほど後ろの小柄な男性が身を折って嘔吐(えず)いていた。  床にぶち撒けられた胃の内容物。()えた臭いに周囲が身を引く。 「ちょっと、大丈夫?」  髪の長い女性が心配そうに声を掛けた。そうして、苦し気に呻く男性の背をそっと擦ってやる。 「ああ、時間のようですね」  そんな中、画面の男だけが変わらぬ調子だった。録画なのか? 訝しく思って見遣ると、男は応えるように告げた。 「実は、力の源は既に皆さんの中にあるのです。皆さん、ここに来る前に移動の車中で眠ってしまったのではないでしょうか」  確かに、そうだった。てっきり、昨夜興奮してなかなか寝付けなかった所為だろうと思っていたのだが……。 「その時に、皆さんの体内にとある錠剤を投与しました。そろそろカプセルが溶け出す頃合いでしょう」  悲鳴が上がった。再度視線を後方に繰ると、そこには理解不能な光景が待ち受けていた。
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