1-2 感染

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「この細菌は人間の血中に寄生し、血液を糧として増殖、活動します。そうして、宿主の肉体を劇的に作り変えてしまうのです。感染すると、まずは強い拒絶反応に見舞われ、大概が死に至る。それから一定数は起き上がりますが、細菌に操られて人を襲うだけの自我の無い怪物と化してしまうのが大半です」  逃げ惑う人々の中、幾人かが出入り口の扉に辿り着いた。しかし、扉は外側から施錠されているのか一向に開く気配が無い。四方を頑丈な金属の壁で囲われたシェルターのような室内だ。これでは、誰も逃げられない。 「これを我々は〝食人鬼(グール)〟と呼んでいます。皆さんにはゾンビと言った方が通りが良いかもしれませんね。〝食人鬼〟は心臓を破壊しない限りは頭を潰そうが何だろうが動き続けるので、使い捨ての兵隊としては有用ですが、如何せん知能がありませんので敵味方の区別が付かないのが難点です。それに傷の修復機能が無い為、存在脆いのです。〝食人鬼〟が血液のみならず肉までも摂食するのは、この欠けた機能を本能的に補おうとしてのことなのかもしれませんね。決して己の身にはならないのですが」
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