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「ところが、稀に生きたまま――自我を保有したまま上手く細菌に適合して変化を遂げるケースがあるのです。その場合は知能があるのは勿論のこと、強靭な肉体に高い自己再生力、更には特殊な固有能力までもを備えた個体が現れることがあります」
霞み出した視界の端、抗うように顔を上げると冴えた月光に似た白銀色が引っ掛かった。あの紫電の瞳の青年だった。私と同じく逃げそびれたのか、集団から離れた位置にぽつりと独り取り残されている。そこに、牙を剥いた動く死体がゆっくりとにじり寄っていく様を見た。
瞬間、脳内にある映像がフラッシュバックした。雪崩込む機械兵。黒光りする銃身。鉛の雨を浴び、宙を舞う妹の細い身体。
――駄目だ。
白み始めた頭の片隅で、私は必死に前方へ手を伸ばした。
「〝吸血鬼〟――人類の救世主となり得る、理想の不死兵。それが、我々の求める強大な力。さあ、この中の何人が、その領域に至ることが出来るでしょうか。改めて、皆さんの新たな門出に、祝福を」
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