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戸惑い、見上げる私の疑問に答えるように、彼は言った。
「君、なかなか目を覚まさないから、血を与えた方がいいかと思ったんだけど……良かった、効いたみたいだね」
安堵するように息を吐く青年。私はまたぞろ混乱した。
血を? 与えた? それでは、先程私が飲み下した、あれは――。
その時、誰かがしゃくり上げるようなか細い泣き声が耳に届いた。何事かと横たわっていた身体を起こす。青年が慌てて背を支えてきた。
「急に動かない方が……」
大丈夫だ、と応じようとしたが、目に映った光景に衝撃を受けて、私は言葉を呑んだ。
辺りは正に地獄絵図だった。黒灰色の金属の壁床に、紅いインクをぶちまけたような血の海がそこかしこに広がっている。その中に溺れるようにして、幾つもの遺体が転がっていた。
遺体の多くは原型を留めておらず、パーツ毎に細切れに分解された肉塊のようになっている。飛散した内臓が強烈な臭いを放ち、思わず口元を押えて呻いた。
「これは……」
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