1-3 覚醒

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 泣き声の主は、部屋の片隅で膝を抱えて震えていた。赤毛のセミロングの女性だ。だだっ広い室内を見渡してみると、他にも何人かは生きた人間が居るようだった。  人間……人間、か?  記憶の回路が繋がるようにして、幾つかの情景が脳内を駆け巡った。眼鏡で白衣の男の狂気じみた話。化け物へと変貌する子供達。  そして私の番が来た時、この白銀の青年が襲われかけているのを見て、それから……。  それから? どうなったんだ?  その後のことが何も思い出せない。とりあえず、青年は無事だったようだが、一体何が起きたんだ? ……私は?  確認すべく己が身を見下ろして、私はギョッとした。酷い有様だった。着ているものはズタボロに破け、血で真っ赤に染まっている。しかし、どこも痛みは感じない。不審に思って探ってみると、傷の類は見当たらなかった。この血は他人のもの? ……それとも。  ――高い自己再生力。  男の話していた言葉が浮かび、目眩を覚えた。  まさか、()()()というのか? だとしたら、私はもう――。 「来るなっ!!」
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