1-4 爆弾

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 敗れた服から露出したままの己が胸元に目を遣る。そこには、やはり傷一つ見当たらない。それだけ大掛かりな処置を施したのなら、何らかの痕が残っていて然るべきだと思うのだが……。  白銀の青年の見解は、こうだった。 「治ったんだと思う。〝吸血鬼〟に成る際に。それ以前は、鎮痛剤とかで痛みが無くて気付かなかったんじゃないかな。〝人間〟か〝食人鬼〟で胸部が無事な子を確認すれば、何か分かるかもしれないけど……」  青年の視線に釣られるようにして、改めて辺りを見渡した。そこにはやはり、変わり果てた遺体の山が広がっているばかりだ。互いに喰らい合った結果か、それとも青年の言うように爆弾の所為なのか、皆見事にバラバラな肉片と化している。  これでは、()()()遺体を見つける方が大変だ。  生き残ったのは――。  私と白銀の青年、金髪、鳶色兄、それから、部屋の片隅で膝を抱えて震えている赤毛の女性。更に、奥にもう一人。長い前髪で顔の隠れた陰気そうな男が、壁に寄りかかりながら俯いて爪を噛んでいる。  ――これだけか。  寂寞(せきばく)たる風が心の(うち)に吹いた。
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