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敗れた服から露出したままの己が胸元に目を遣る。そこには、やはり傷一つ見当たらない。それだけ大掛かりな処置を施したのなら、何らかの痕が残っていて然るべきだと思うのだが……。
白銀の青年の見解は、こうだった。
「治ったんだと思う。〝吸血鬼〟に成る際に。それ以前は、鎮痛剤とかで痛みが無くて気付かなかったんじゃないかな。〝人間〟か〝食人鬼〟で胸部が無事な子を確認すれば、何か分かるかもしれないけど……」
青年の視線に釣られるようにして、改めて辺りを見渡した。そこにはやはり、変わり果てた遺体の山が広がっているばかりだ。互いに喰らい合った結果か、それとも青年の言うように爆弾の所為なのか、皆見事にバラバラな肉片と化している。
これでは、健全な遺体を見つける方が大変だ。
生き残ったのは――。
私と白銀の青年、金髪、鳶色兄、それから、部屋の片隅で膝を抱えて震えている赤毛の女性。更に、奥にもう一人。長い前髪で顔の隠れた陰気そうな男が、壁に寄りかかりながら俯いて爪を噛んでいる。
――これだけか。
寂寞たる風が心の裡に吹いた。
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