1-4 爆弾

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 いつの間にか場も静まり返っている。すると、互いの呼吸音すら聞き取れそうな静寂の中に、 「……くも」  ぽつりと、その声が落とされた。抱えていた弟の生首を地面に下ろして、鳶色兄がすっと立ち上がる。――そして、 「よくも弟をッ! 殺してやる!!」  咆哮と共に、彼は金髪目掛けて突進した。振り上げたその右腕が、突如として青い炎に包まれる。私は目を剥きながらも咄嗟に間に入り、鳶色兄の肩を掴んで制止した。 「待て、落ち着け!」  炎に触れないように気を付けながら、内心動揺を禁じ得ない。この炎は一体何だ? 幻ではない。きちんと熱気を感じる。金髪の男の腕といい、何が起きている? 「離せぇっ! 邪魔をするな!」  鳶色兄は逃れようとするが、ひとまずその炎を私に向ける気は無いようだった。そこに一筋の理性を見出し、私は何とか説得を試みる。 「気持ちは分かるが、私達の間で傷付け合ってどうする!」 「もうイヤぁあっ!! こんなのイヤぁあっ!!」  痛切な嘆きが割って入った。赤毛の女性だ。座したまま両手で頭を抱えて振り乱す。その心情は痛い程理解出来るが、こちらの気分まで滅入りそうだ。
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