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1-5 祝福
白衣で眼鏡の男は、最初に顔を見せた時と何一つ変わらない様子だった。考えてみれば、兵士を育成する機関の責任者にしてはおかしな点ばかりだ。その出で立ちは、軍人というよりもどう見ても研究者のそれだろう。
ここは、軍用機地ではなく実験施設だったのだ。……今更気が付いたところで、もう遅いが。
「まずは、生き残った方々、おめでとうございます。あなた方は、より強力な生命体として見事に生まれ変わったのです。――そう、我々人類の未来の救世主たる存在、〝吸血鬼〟に」
画面を睨み据える私達の視線などどこ吹く風で、男はにこやかに拍手までしてみせた。その慇懃無礼な態度は、煽っているのかとしか思えない。
すかさず怒声を発したのは鳶色兄だった。彼の炎は現在消えている。
「ふざけるな! お前の……お前らの所為で、弟は……弟はっ!」
「ああ、それは残念なことでございました。我々としても不本意な結果です。しかし、双子のご兄弟であっても必ずしも二人ともが細菌に適合する訳ではないと知れたのは、なかなかに興味深い研究成果ですね」
研究成果、だと?
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