1-5 祝福

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「ッ……お前!!」  血液が沸騰した。これ程までに人に怒りを覚えたのは初めてかもしれない。  当事者である鳶色兄は私の非ではないだろう。彼は憤激し、画面の男に向かって半歩身を乗り出した。だが、相手が画面の中ではどうしようもない。行き場のない感情を持て余すように、彼は震える拳を強く握り締めて唇を噛んだ。  しかし、先程男が返答したことで、どうやらこれは録画の類ではなくリアルタイムでこちらと繋がっている映像だということが判明した。私は抗議代わりに男に疑問を投げ付けた。 「何故、こんなやり方をした? 細菌に感染させることが目的なら、錠剤にする必要はあったのか? わざわざ大勢を集めたタイミングで一斉に発症させるような真似をしたのは、どうしてだ」  まるで、そう――私達を殺し合わさせようと、画策したみたいな。 「兵士としての訓練の一環ですよ。〝食人鬼〟と闘わざるを得ない状況を作り上げることで、皆さんには己の〝吸血鬼〟としての力の使い方を学んで欲しかったのです。実際に何人かの方は能力を覚醒させたようで何よりですよ」  その口ぶりだと、ずっとこちらの様子を監視していたのか。
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