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「当然の措置ですよ。皆さんは特別な存在。人類の希望。言うなれば、大切なお客様ですからね。私生活においては、こちらとしても可能な限りの好待遇をお約束致しますよ」
何だ、それ。
「ご機嫌取りってところかな。俺達の反発心を抑える為の。焼け石に水だと思うけどね」
白銀の青年が皮肉を言うも、男はさして気にした風もない。
「そう思って頂いても結構ですよ」
「……特別な、存在」
その時、初めて聞く声がした。あの前髪の長い男だった。それまでずっと心ここに在らずな様子で俯きがちだったのが、気付けば顔を上げて画面に見入っている。
前髪の隙間から見える素顔には、どこか高揚の色があった。白衣の男の話に感じ入り、歓喜してでもいるような――。
場違いなその反応に、私は何だか背筋に寒気を覚えた。何故だろう、胸騒ぎがする。
「だ、だったら、帰らせてよ!」
赤毛の女性の訴えで、ハッとした。
「わたしだって、本当は闘いたくなんてない! 兵士になんか、なりたくないのに! 無理に連れて来られただけなの!」
彼女は泣き腫らした赤い目で切々と紡いだ。だが、白衣の男はにべもない。
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