1-6 生贄

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 地獄の釜、あるいは蠱毒の壺の蓋は、外部からゆっくりと開かれた。警戒するように慎重な足取りで入室してきたのは、ものものしく武装した数人の大人達だった。感染対策だろうか、宇宙服みたいな密閉型の防護服を着込んでいる。銃を持っているが、兵士ではなくこの研究所らしき場所の職員なのかもしれない。  その中心に、あの白衣の男が居た。周囲を部下達に守られるようにして、一人だけ武器も持たず防毒衣も着用せずの軽装だ。――事が起きたのは、その時だった。  男の姿を捉えた途端、鳶色兄が雄叫びを上げてそちらに駆け出した。鎮火していた青い炎が、再びその腕を覆う。銃口が一斉に彼を狙った。程なくして、無数の発砲音が上がる。防毒衣達は躊躇なく鳶色兄を撃ったのだ。  弾は鳶色兄の足や胴体を穿ったが、それで彼が止まることはなかった。着弾した部位からは再生による弾の排出が()され、寸の間で傷が修復されていく。  目を瞠った。本当に、あんなことが。あるいは私も、あのようにして……。
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