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欲を言えばインスタントでなくきちんとフィルターで淹れたものが良いが、それは流石にこの状況では贅沢に過ぎるというもの。
今はこの一杯に感謝して、ゆっくりと味わいながら新しい朝の到来を祝福しよう。……なんて、思っていたのだけど。
「無粋だなぁ」
ぽそり、呟くと同時にソファを蹴立てるようにしてその場から飛び退る。直後、ぴしりと朝焼けの空に亀裂が走った。窓ガラスを貫き飛来した弾丸が、先程まで俺が座っていたソファの背もたれに突き刺さる。
「コーヒー一杯分の猶予くらい与えてくれてもいいんじゃない? ……ねぇ、アイちゃん」
途端、ひび割れた世界にトドメを刺すが如く、窓ガラスを突き破って白い軍服の男が転がり込んできた。
飛び散るガラス片の中、瞬きもせず真っ直ぐにこちらを見据える黒い瞳。オールバックの黒い短髪。二メートル越えの巨体の持ち主、アイちゃんことアインスは、いつものように精悍な顔立ちに硬い表情を浮かべていた。
今しがた挨拶代わりに一発くれたアサルトライフルは銃口を下に向けている。話す意思はあるようだ。
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