0-2 君には、教えてあげない。

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「やっぱり君が来たか。まぁ、そうだよねぇ。俺に対抗出来るのは、君くらいのものだもんね」 「…………」 「それにしても、遅かったね。もっと早く見付けてくれるかと思ってたんだけど。とりあえず、座ったら? あ、コーヒー飲む?」  (おど)けた調子で話し掛けるも、アインスの表情は動かない。鉄製なんじゃないかと思う程にこれまでも彼がそこに感情を映すことはほぼ無かった。全身筋肉達磨みたいな奴なのに、どうも表情筋だけは鍛えられていないらしい。 「何故だ」  その彼の引き結ばれた唇からは、前後の会話内容をガン無視して短い問い掛けが成された。 「何故、こんなことをした――02」  02(ゼロツー)……普段しない無機質な呼び方を敢えて使ったのは、私情を切り捨てる覚悟の表明だろうか。  俺は知っている。一見、感情の無いロボットみたいな君が、実は誰よりも心優しい人だということを。 「さぁ? 何でだと思う?」  答える代わりに、挑発的に笑んだ。  ――君には、教えてあげない。
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