1-1 追憶

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1-1 追憶

「何故だ」  押し殺したのは、怒りか、悲しみか。激情をひた隠すよう、私は努めて平静な声音で問うた。 「何故、こんなことをした――02」  適合体No.02 〝zwei(ツヴァイ)〟の逃亡を受け、軍部から彼の追跡及び殺処分の命令が下された。  永年の相棒の突然の行動に、私は困惑を禁じ得ない。当人も分かっていた筈だ。逃げ出したら命は無いことを。なのに、何故――。  何故、私は友をこの手に掛けねばならないのか。  ツヴァイは刹那、表情を消した。そうすると人形めいた綺麗な顔に一層の凄みが増す。息を詰めて答えを待つ私に、彼は直後口元に笑みを刷き、 「さぁ? 何でだと思う?」  茶化すように、問い返した。  〝君にそれが分かるかな?〟とでも言いたげな、挑戦的な瞳。その紫水晶(アメジスト)のような紫色を見つめていると、ふと過去の記憶が刺激された。  そうだ、私はこの瞳に魅せられたのだ。  ツヴァイと初めて逢った、あの惨劇の日に――。    ◆◇◆
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