お姫様抱っこと恋人宣言

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お姫様抱っこと恋人宣言

 ハルトは私の夢をかなえる王子様だ。  ブタのようなひどい姿になった彼を悲しんだが、私は彼の言葉で変化してしまった彼そのものをまるっと受け入れていた。 「俺は一生この姿なのかもしれないよ。声だって変わってしまった」  悲壮感溢れる声で絞り出されたその言葉は、彼には私の心がとっても必要なのだと吐露しているも同じだと思わせたのだ。  あの、恋い焦がれた本の中だけの王子様、ハルトムート・ロラン様が、私をこんなにも想ってくれているのよ!  実際の彼は年相応の少年で短気で短慮な所もある人だったが、それでも人の身になって考えて、考えすぎて落ち込んじゃうような優しさもある人なのだ。  大好きな女の子、きゃあ私よね、を身を挺して守ろうとするような、そんな男性の外見が変わったからと手放すの?  まさか!  私こそモブでしかないし、年を取ればどんな風に変化するか分からないのよ!  前世で望んだ、もっと相手のことを知りたい、そんな愛すべき相手に私は出会えて恋をしているのよ。  外見だけじゃなくなったの!! 「私をパーティ会場に連れて行って!」  自分の気持ちが決まるやそう叫んでいた。  世界に叫びたい。  彼は私の恋人だと。  私こそ彼を愛し続けるって!!  あら、私の方が重いかしら。  でも、心配は無用だった。  私を彼の世界にしてくれた彼は、私が彼を愛するぐらいに私を愛してくれているみたいだと、彼が流した涙で私は思い知らされたのである。  どんなことがあっても、私は彼の傍にいよう。  絶対に、ぜったい、私が彼を守って行こう。  私はブタ人間となってしまった彼だろうが、ハルトである限り愛していると、彼の唇を待つようにして瞼を閉じた。 「このド阿呆ハルトが!そのまんまミュゼに触れたらミュゼが痺れ毒で死んでしまうぞ!なあ!」  え?  ええ?  水を被るやハルトの顔がぐにゃりと歪み、そのままぞぞぞぞっという風にしてピンク色のスライムが彼から取り除かれたのである。  殆ど一瞬にして。  まばらだった頭髪はいつものようにふさふさに戻り、そう、私の目の前にはいつもの神々しいぐらいにハンサムな想い人が立っている。  そして、その天使は当たり前のようにして私を抱き上げたのである。  喪女だった私の永遠かなわない夢だったはずの、お姫様抱っこ。  それを夢の王子様がしてくれているのだ。  恐らく、きっと、今の私は、ハルトが運ぶ場所どこでも連れ去られても構わないぐらいの気持ちだわ。  でも彼は最高の恋人でもある。  私の願いをそのままに、私をお姫様抱っこしてパーティ会場に突撃してくれたのである。  さあ!!やってやるわ!!  これからどんな酷い目に遭わせられても、私は彼が自分の恋人だって叫んでやる!!  絶対に負けるものか!!
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