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「ハルトは驚くでしょうね。それで、私じゃないって真実を知って、ハルトはどうなるの?ハルトの心はどうなるの!」
「彼には幸せばかりだよ。人間は信じたいものを信じるんだ。エルヴァイラが復活した時、彼は君の名前も顔も忘れる。そんな魔法だ。信じたくないでしょう。自分が別の女性を甲斐甲斐しく世話していた間、助けなければいけない恋人を失っていたって認めるのは。だったら、最初から愛していた女性を看病していたって思い込んでいた方が幸せになれる。そう思わないかい?」
「つまり。ハルトの心を殺すのね」
「仕方ない。世界は無能力者ばかりだ。世界を守るには能力者なんていらないって考えだ。でも、他にはない守りは欲しい。じゃあ、駄犬からは牙を抜こう。絶対に命令を違わない犬だけを生かそうよ」
「ひどい。ひどすぎる」
私は両手で顔を覆っていた。
酷すぎて涙も出ない。
知った事実が辛すぎて、顔も上げられないのだ。
「ふう。君は本当に単細胞だね。ハルト君ハルト君、だ。本当に可哀想なのは君なのに。君こそエルヴァイラの世界を壊すものとして処分命令でしょう。君がいるとあの子が暴走するんだ。余計な力を使って目立ってしまう。救急車両を横転させて、君とハルト君、そして救急隊員を含めての、六人も重軽傷者を出しちゃうくらいにね」
私は顔から手を下げていた。
私とハルトがこの世界で生き延びれる事をこの男は言ったのか?
エルヴァイラの能力が漏れたらお終い?
エルヴァイラの能力がトップシークレット?
「呪文無しに通りすがりに人の心臓を潰せる。頭を破裂させることが出来る。素晴らしい能力だと思わないかい?」
「……そうね。そんな事が出来るようになるには、人の心も人としての考え方なんかも不要になるわね」
アストルフォは、学校の先生が生徒によくできましたと言った時の様にして、私ににこっと微笑んで見せた。
そして、彼が持ってきた箱からA4サイズぐらいのコードが付いている板、前世だったら板タブと呼んでしまいそうな形状の物を取り出した。
この世界でそれは板状のペンタブレットではない。
似た様にして板から出ているコードをパソコンに突き刺すが、その板が感知するのは魔法力という人間が出すオーラの煌きである。
「さあ、ミュゼ。計ろうか。君が生きて行けるかどうかの大事な判定だ。目に見えた能力は見えないが、一度は俺に殺された君だ。なかなかの魔法力が判定できるはずだと思うよ」
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