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監禁者に留守番を命じられる
アストルフォの非情な言葉に、私は悲鳴のような大声を上げていた。
だって、私の関係者全部を銃殺刑にしちゃうって言ったのよ。
ハルトに全部の罪を擦り付ける形で、なんて!!
「やめて!殺さないで!あなたとえっちとか、私が死ぬとか、ハルトが死ぬとか以外だったら、なんでもあなたの言う事を聞くから」
「君ね、その弾いた選択肢以外は俺には何の旨味も無い何でもになっているって気が付いている?じゃあ、君の拷問かな。全部の爪を剥いで見ようか」
ああ、自分が死ぬを弾いた私馬鹿!
でも、皆が殺されないなら、と両手を震えながらアストルフォに差し出した。
アストルフォは差し出された私の両手に目線を落とすと、ふっと息を私の手に吹きかけた。
「きゃあ!」
私の手の甲は息を吹きかけられただけなのに、鞭がしなった様な音を立てた何かに強く叩かれた衝撃を受けたのだ。
強い痛みを受けた私の両手の甲には、真っ赤な線が一本浮き上がっている。
「悪い子には鞭を与えるものだ」
「悪い子?あなたが爪を寄こせって」
「言ったね。だが、そんな爪剥ぎ、俺が楽しむと本当に思うのかな?俺が望んだのは、いや、やめてぇ、という君のいつもの色気のない叫びだった」
「ご、ごめんなさい」
「よし、素直だ。君は俺に殺されたく無いものね。では、殺されたく無いのなら、ここで一人でも大人しくしているかい?約束するならね、俺が直々にハルト君達に騒がないように説得して、彼らを殺さないようにしてあげる」
「やく、約束します」
約束すると身を乗り出した私に、アストルフォは洗濯に掃除と、それから私自身の監視をするように命令した。
「外に逃げたきゃ逃げてもいいけれど、ね」
「逃げません。約束します。だから、皆を、皆を!」
「では――」
続けてアストルフォが言って来た事は、彼が指定した数時間ごとに、私が逃げていない、という連絡を彼にいれるという約束だ。
それも、電話をかけて彼が応対すれば、次に私が連絡する時間と番号をそこで伝えられるというゲームみたいな連絡方法なのである。
「二時間ごと、とか、どうして決めないの?」
「俺が電話を取れる場所にいなきゃ、君の生存確認が出来ないでしょう。まずは俺がこの家を出た三時間後だ。今が八時二十四分だから、十一時半でいいかな」
「まあ!私は十一時半までは確実に生きていられるのね」
「そうだ。その調子で従順にだ。じゃあ、まず食べてしまいなさい」
「いただきます」
「ああ、そうだ。君は人質であって、人質を取られてもいるんだ。家族と恋人、それに、親友たち?絶対に俺の言う事を違えるんじゃないよ」
私は子供の様にして大きく頭を上下させていた。
私が彼の不興を買えば、ハルトも両親も、ダレンもニッケも、そして、きっと、ジュールズも殺されるのだ。
声を出して返事をするべきだが、声を出したら泣き叫びそうだった。
アストルフォを怒らせまいと彼が作った卵を口に含んだが、今の私にはそれが砂みたいな味としか感じなかった。
私は無理やりに飲み込んで、いた。
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