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「でもね、訓練は無意味だったとは思えない。私たちの攻撃なんて効果はないし足手まといだけど、補助は意味あると思うの」
「魔物が現れたら、ギリギリの射程範囲で宮廷魔術師の支援をすることは可能ですわ…」
「そっか、戦える人に最大限戦ってもらえれば…」
その時、広場の奥から悲鳴が聞こえた。
「きゃあああ!」
「来たぞ! 群れだ!」
「鳥型もいるぞ!」
広場の学生は一斉に魔物と反対側に下がり、代わりに魔術師が前に出る。
魔物の数は大小合わせて10以上いるが、魔術師の数は5人。前回破られた時よりは多い。
「教授って来るのかな」
「わからない、近くにいなければすぐには来れないだろうし」
魔術師たちが戦っている。
しかしすぐ2人が離脱し、奥へと向かった。
「もしかして奥の方が魔物が多いのかな」
「3人になってしまいましたわ。大丈夫なのでしょうか」
「危なくない距離で手伝おう。魔力の底上げと防御の底上げ、それと危機感知の感度を上げる補助…魔力制御、あと水の加護と魔物には足枷の魔法で」
「私魔力上昇しかできないよ」
「では私は防御上昇と魔力制御を」
「残りは私がやるね。ラッピー、まず私たちに魔力上昇させて」
ラッピーが3人の魔力を上昇させ、その間にコールディアは魔法を広域展開させる補助をかける。
「いつそんなに覚えたの」
「先生の助けになればいいなって、少しずつね。さあ宮廷魔術師を手伝うよ」
魔力の範囲をかなり広げることができたので、忙しく戦う宮廷魔術師に対し後方から補助をかけていく。
彼らは自分たちの能力が向上したことに気づくと中の1人がコールディアたちを振り返り、挨拶でもするように片手を上げすぐ戦闘に戻った。
「助けにはなってるみたいだね。仕留めるスピードが上がったもん」
「見て、また出てきましたわ…奥の方々は大丈夫なのでしょうか」
後から到着したらしい宮廷魔術師が数人、先に戦っている仲間の元へと急いだ。
コールディアたちは彼らにも補助をかけ、成り行きを見守るしかない。
魔物は増えたり減ったりするけと、いなくなることはなかった。
キィィィィィンッ
「またですわ!」
「この倍魔物が来るとなったら対処しきれないんじゃないの!?」
「大丈夫、彼らならまだいける」
「レングラント様!?」
あとからあとから増える魔術師の中に、レングラントがいた。
彼は訓練の時によく見る宮廷魔術師用のローブと違い、装飾や呪文が多く刻まれたどう見ても戦闘向けの群青のローブを身に纏っていた。
「コールディア、君はここから補助をしてくれているのか?」
「はい、友達と出来る範囲で」
「それは助かる。いくら訓練をしたとは言え学生のほとんどは戦力にはならない。だがそうやって補助をされれば我々の力は数倍にはなる」
「よかった、邪魔にはなってないんですね」
「当たり前だ」
「レングラント様、先生は? 先生はここにはいないんですか?」
彼は一瞬口をつぐみそうになるが、そんな悠長な時間はない。
「彼は…アフィは今は来れない」
「それは他の所で戦っているという意味ですか?」
「違う。アフィは今日にでも結界が破れることが分かっていた。夜通し魔物を殲滅した上、発生しかけの“魔王”のエネルギーを減らすべく繰り返し古典魔術を使っていた。昨日になって限界が来て、今フリーシャが傍にいる。大丈夫、彼女ならすぐ回復させる」
さっとコールディアの顔が青くなる。
大丈夫と言われても、目の前で状態が確認できない以上、本当に大丈夫なのかわからない。安心させるために、嘘をつくことだってできるはずだ。
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