第26楽章 運命の時

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「でもね、訓練は無意味だったとは思えない。私たちの攻撃なんて効果はないし足手まといだけど、補助は意味あると思うの」 「魔物が現れたら、ギリギリの射程範囲で宮廷魔術師の支援をすることは可能ですわ…」 「そっか、戦える人に最大限戦ってもらえれば…」  その時、広場の奥から悲鳴が聞こえた。 「きゃあああ!」 「来たぞ! 群れだ!」 「鳥型もいるぞ!」  広場の学生は一斉に魔物と反対側に下がり、代わりに魔術師が前に出る。  魔物の数は大小合わせて10以上いるが、魔術師の数は5人。前回破られた時よりは多い。 「教授って来るのかな」 「わからない、近くにいなければすぐには来れないだろうし」  魔術師たちが戦っている。  しかしすぐ2人が離脱し、奥へと向かった。 「もしかして奥の方が魔物が多いのかな」 「3人になってしまいましたわ。大丈夫なのでしょうか」 「危なくない距離で手伝おう。魔力の底上げと防御の底上げ、それと危機感知の感度を上げる補助…魔力制御、あと水の加護と魔物には足枷の魔法で」 「私魔力上昇しかできないよ」 「では私は防御上昇と魔力制御を」 「残りは私がやるね。ラッピー、まず私たちに魔力上昇させて」  ラッピーが3人の魔力を上昇させ、その間にコールディアは魔法を広域展開させる補助をかける。 「いつそんなに覚えたの」 「先生の助けになればいいなって、少しずつね。さあ宮廷魔術師を手伝うよ」  魔力の範囲をかなり広げることができたので、忙しく戦う宮廷魔術師に対し後方から補助をかけていく。  彼らは自分たちの能力が向上したことに気づくと中の1人がコールディアたちを振り返り、挨拶でもするように片手を上げすぐ戦闘に戻った。 「助けにはなってるみたいだね。仕留めるスピードが上がったもん」 「見て、また出てきましたわ…奥の方々は大丈夫なのでしょうか」  後から到着したらしい宮廷魔術師が数人、先に戦っている仲間の元へと急いだ。  コールディアたちは彼らにも補助をかけ、成り行きを見守るしかない。  魔物は増えたり減ったりするけと、いなくなることはなかった。 キィィィィィンッ 「またですわ!」 「この倍魔物が来るとなったら対処しきれないんじゃないの!?」 「大丈夫、彼らならまだいける」 「レングラント様!?」  あとからあとから増える魔術師の中に、レングラントがいた。  彼は訓練の時によく見る宮廷魔術師用のローブと違い、装飾や呪文が多く刻まれたどう見ても戦闘向けの群青のローブを身に纏っていた。 「コールディア、君はここから補助をしてくれているのか?」 「はい、友達と出来る範囲で」 「それは助かる。いくら訓練をしたとは言え学生のほとんどは戦力にはならない。だがそうやって補助をされれば我々の力は数倍にはなる」 「よかった、邪魔にはなってないんですね」 「当たり前だ」 「レングラント様、先生は? 先生はここにはいないんですか?」  彼は一瞬口をつぐみそうになるが、そんな悠長な時間はない。 「彼は…アフィは今は来れない」 「それは他の所で戦っているという意味ですか?」 「違う。アフィは今日にでも結界が破れることが分かっていた。夜通し魔物を殲滅した上、発生しかけの“魔王”のエネルギーを減らすべく繰り返し古典魔術を使っていた。昨日になって限界が来て、今フリーシャが傍にいる。大丈夫、彼女ならすぐ回復させる」  さっとコールディアの顔が青くなる。  大丈夫と言われても、目の前で状態が確認できない以上、本当に大丈夫なのかわからない。安心させるために、嘘をつくことだってできるはずだ。
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