保身

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

保身

 メアリーは風呂上がり、体重計に乗ったあと、夫に告げた。 「あなたあ」 「ん。どうしたハニー」 「体重計あるでしょ。コンピューター付き体重計」 「うん」 「故障してるらしいのよ」 「え。なぜ」 「ここ半月、毎日乗るたびに1キロずつ増えていくのよ」 「ここ半月かーー。ドーナツショップがオープンしてからだな」 「そうなのよ。でね、いま計ったら、今日も昨日より1キロ増えてて」 「うん」 「102キロですって。完全にイカれてるわ」 「……」 「あんなの捨てるわ。あんなオンボロ役立たず。スクラップ工場で滅茶苦茶に壊れちゃえばいいのよ。メタクソ、ズタボロになっちゃえばいいわ。いい気味よ」  夫は部屋の隅の体重計を眺めた。 「……」  翌日。 「あなたあ」 「ん」 「体重計、正常に戻ったらしいわ。捨てなくていいみたい。  さっき計ったら37キロですって」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!