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美優は過去に二度も遅刻しているので、今回が三度目の遅刻になるのはどうしても避けたかった。二度目の遅刻の時、すでに生活指導の先生に脅迫まがいの警告を発されているのだ。
「三度目の正直というよな? 今度遅刻した時は……。わかるな、葦原?」
あの鬼教師のラスボス感溢れる睨み顔は、もう二度と見たくない。どうか間に合ってくれ、と天に祈りながら美優は走り続けた。
住宅街を抜け、坂を下って、踏切の前に来たところで踏切警報機が鳴る。バーが下がってしまい、その前で美優は地団駄を踏んだ。こうなってしまうと踏切が開くのに2分は待たなくてはいけない。
美優は足踏みしながら、踏切の向こう側を見つめた。
その時、向こう側にある左側の道から、小さな子供を連れた男性が現れた。
子供は、女の子だった。幼稚園生なのか、紺色の帽子に紺色の制服を着て父親に抱っこされている。腕の中ではしゃいでいた娘に対し、父親は満更でもない表情を浮かべている。
父親のがっしりとした体型と、風に吹かれてもじゃもじゃになった髪に、どこか見覚えがあった。
そこで美優はハッとした。
「あ、かずきおじちゃんだ!」
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