久しぶりで賞

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※  騒々しい親子を見送ったあと、 「もう行きましたよ」  ディレクターが言った。 「まさかこんなに上手くいくとは」  身を起こして目を丸くする俺にディレクターはニヤリとした。 「大成功ですね。陰口のシーンもバッチリ撮れましたよ」  白い猫が膝の上にのってきて丸くなる。 「最初からもしやとは思ってたんだ。君だろ? 福引券を俺のコートのポケットにいれたのは」 「そこから気づかれてましたか。わざとらしくぶつかり過ぎましたかね」 「状況を理解したのはあのメニュー表を見た時だ。久しぶりに会っかたと思えば二人して何たる仕打ち、と腹が立ったよ。しかし『逆に騙してやれ』という指示には緊張して目眩がした。確かに筆記体なら妻にバレる心配もない。お見事だ」 「僕も慣れないハッピを着たりバーテンダーをやったかいがありました。それより大丈夫なんですか?」  覗き込んでくるディレクターを見返す。 「何が?」 「色々と言われたい放題だったじゃないですか」 「別に構わんよ。それより今はオンエアの日が待ち遠しくて仕方がないんだ」  俺は抑えきれない笑みをこぼした。 「こんなに胸踊るのは久しぶりだよ」  
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