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通勤電車は、今日も人を満タンに詰め込んでいる。
充はSNSを漁っていた。
贖罪ゲーム。最初は悪戯かウイルスかと思った。しかし、腕輪をつけられているという事実が、それを否定する。
昨夜、床についた時にはなかったはずだ。つまり、自分の就寝中に取り付けられたわけである。
妻か娘の仕業か? いや、こんな低俗な行為をするような女ではない。夫や父が仕掛けに気がつくかどうか、試しているような素振りもなかった。
では、第三者が侵入した? 都内新築マンションのセキュリティを甘く見るな。
こうなるといよいよ、充の悪寒を誘うのである。
検索結果を見るうちに、どうやら贖罪ゲームに巻き込まれたのは、充だけはないことが分かった。確認できただけでも七人いた。
『今朝起きたら、スマホにこんな画面が表示されてたんだが』
『ウイルスじゃねーの? 初期化してみ?』
『いきなりそんなの出るわけないだろ。嘘お疲れー』
『私にも出てました!』
『あれじゃね? ドッキリで話題のテレビの企画じゃね?』
『うわー怖いよー僕はなってなくてよかったーお達者でー(棒読み)』
大半の一般人からはお笑い草になっているが、当の本人達が真面目であることを、充は知っている。知らざるを得ない。
『参加者だけで真剣に話し合いたいので、贖罪ゲームのプレイヤーはメッセージをください。腕輪の写真を添付してください』
ゲームに巻き込まれた男が、こんな投稿をしていた。
充はシャッター音が鳴らないよう設定してから、自身の右手首を撮影する。
『私も今朝起きたら、腕輪が付いていました。情報を共有したいです』
充がこうメッセージを送ったと同時に、目的の駅に到着した。
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