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——仕事終わり、茜色の電車の中で、充はチャットアプリを開いていた。
あの後、贖罪ゲーム参加者だけが入れるチャットルームを案内されたのだ。
『私、警察に捕まるようなこと、した覚えがないのに。罪を償えってなんですか』
『僕もだよ。誰に何をしろっていうんだ』
他の参加者も、充と同じく五里霧中らしい。
このチャットに集まっているのは百人以上。ここの存在を知らない人もいると考えれば、決して小規模とはいえない。おまけに参加者の住所は、北海道から沖縄にまであるらしい。ますます悪戯だとは思えなくなってしまった。
使えない奴らだ。自分が仕事をしている間に、何か情報を掴んでいると思ったのに。学生時代の時に従えていた奴らは、劣等種なりに、まだ自分の駒として動いていたのに。……
『何か分かった人は、すぐに書き込むようにしましょう。私も、気がついたことは知らせます。協力していきましょう』
こうコメントした充は、スマホを鞄にしまって溜息をついた。
*
「あなた、おかえりなさい。ご飯にしますか? お風呂にします?」
「お父さん、おかえりなさーい」
家に帰ると、自慢の妻と娘が出迎えてくれる。充に起きている非日常など、夢であるかのように。
「風呂にするよ」
この幸せを失うわけにはいかない。そのためにも、ふざけたゲームを攻略せねばならないのだ。
*
次の日の朝、充は真っ先にスマホを確認した。
チャットルームは盛り上がっていた。
『腕輪が外れた!』
添付された写真には、解放された手首と、机に転がる腕輪が映っていた。
「どうやったんだ⁉︎」
充は会話を追う。
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