1-5 潜入5

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1-5 潜入5

「手元の資料によれば、君が今いるマザー後部第11接地柱は、出母歴144年にカントー移民群へ開放されたらしい」 「そりゃ随分と昔ですね」 「そうだな。何千年も昔のことだ」  小学部で習った歴史の授業を思い出す。母星をでて百年を過ぎたころから、今のセントラルは人口爆発で飽和状態になったそうだ。そのためマザー内部のいろいろな場所の開拓が始まった。  この柱も、その時代に解放され、開拓されたのだろう。 「それで今、中の様子はどうなんです」 「移民局が、後部第11接地柱エリアの臨検視察を行ったのは、直近では八年前だ。しかしその時は、柱最上部でこの地域の移民群統治官と会っただけだな」 「はあ」 「そう気の抜けた返事をするな。その時の感触では、まあそこまで治安は悪くないらしい」 「俺がいるのは、柱の最下部なんですよね」 「そうだな。知っての通り、移民の居住エリアはマザー中央部から離れれば離れるほど、統制が甘くなる。そう言う意味では、そこは最辺境と言えるだろう」 「で?」 「柱最下部まで行った視察の最後の記録は五十年以上前だ。これではアドバイスに、役にも立たんだろう」  俺は声にもならないため息をついた。思っていたより深刻な状況らしい。 「その部屋の奥に一枚の扉がある。その扉はこちらで操作可能だ」 「ええ」 「開放後、速やかに扉を潜れ」 「不法入界ってことで良いのですね?」 「君が入界後、速やかにカントー移民群へ連絡を入れる。しかし、その連絡はすぐにはそこまで届かんだろう。君はとにかく身の安全を確保しつつ、柱の最上部にいる後部第11接地柱エリア移民群統治官に会うことだ。そうすれば下第七エンジン整備部へ案内してくれるはずだ」
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