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不幸ヤンキー、”狼”とぎこちなくなる。【1】
…久しぶりに集まったんだな。この3人は。
とある喫茶店の店員が3人の姿を見てふと思ってから接客の作業をする。
1人は青みがかかっている銀色の髪をした、まるでどこかの王子様のような男性。そして隣には黒髪ではあるが座っていても背が高い、がたいの良い男性。…そして、これまた黒髪ではあり寒さゆえに着込んではいるものの…へそ出しをして”狼”の入れ墨を刻んでいるサングラスの男性がそこに居た。
そんな3人のうち1人のがたいの良い男性…撫子は優雅に紅茶を飲んでいる銀髪の男性、麗永に話し掛けるのだ。
「それで場磁石がよ~。なんでか知らないが官能物書いてきやがってさ~、初めは困ったんだが、まぁ、その線もあるな~と」
そして呑気にホットコーヒーを飲んでは不敵な笑みを見せる撫子に麗永は侮蔑するような目線を向ける。…だがそんな彼の視線など、この図太い神経の男には通用しない。だからアールグレイを嗜んでいる王子は彼を嗜めたのだ。
「あるな~ってなんですか、どういうニュアンスなのかを尋ねたいものですね?」
すると撫子は豪快に笑っては言い放つのである。
「売れればなんでも良いんだよな~。はっはっは!」
「…あなたは本当に欲に関して本当に貪欲な方ですよね。まったく……」
撫子と麗永がせわしなく談笑しているがサングラスの男、哉太は何かを考え込んでいた。そんな彼に撫子は気が付いてから不敵な笑みを見せるのだ。
「どうした~、場磁石~?」
「あぁ…まぁ、ちょっとね…」
そして哉太はカフェモカを一口飲むのだが、それでも深い息を吐いてしまう。すると撫子は察したように哉太を肘で小突くのだ。
「…そういえば、あのテレパシー娘が居座ってるって聞いてるがな~、…そのせいで絶倫の場磁石様は、行為も出来ねぇから欲求不満でヤれねぇってか?」
とてつもないほど下品な彼の問い掛けに麗永は眉間に皺を寄せる。しかし撫子の下劣さを哉太はすんなりと受け入れているので気にしていない様子であった。だがそれだけの問題では無い。
「…まぁそれもあるんだけどさ~、…少し違うんだよね~」
「ふ~ん。マンネリって奴か、行為に関してのか!」
「…認めざる得ないな~。最近、花ちゃんとセックスしてないし…」
「そういう時は薬を盛るか精力剤かなにかで―」
彼らの会話を聞いて麗永は頭を抱えた。
「…あなたたちの会話はサル並みですか。まったく、下品で頭が痛くなりますよ…」
麗永が頭を抱えて落ち着かせるように紅茶を飲む。しかしそんな彼らに哉太は思い出すように回想に浸って話していくのだ。
「あれ、こころは?」
「心ちゃんは別で食べるってよ。…大丈夫かな」
朝食の用意をしても囲戸 心は1人で食事を摂るか食べずに学校へ行ってしまう。初めは馴染めないだけかと思っていたのだが、その行為は次第にエスカレートしていくのだ。
「あれ、こころは部屋にも居ないの?」
すると幸も不安がっていたのだろう。心配を抱く様子で哉太へ報告をするのだ。
「今日は親戚の家に泊まるんだと。電話しようとしたら止められたけど…」
眠る時は別々か親戚の家で寝泊まりするらしい心の様子に、哉太と幸は不穏に感じながらも、本人に言い出せずにいる。なぜならば彼女は自分たちとコミュニケーションを取ることでさえも控えているのだ。
―そしてもう1つの変化が。
「今日はさ…哉太さん、俺ん家に泊まる?」
すると哉太の性に関するボルテージが上昇したのだ。自分の思考がピンク色に染まってきているのが自分でも分かるほど興奮をしてしまう。
…おっ、今日こそはヤレるか~。…夜の営みの申し込みか!
可愛らしく尋ねてくる幸に哉太は嬉しさのあまり何度も頷くものの…それは哉太が想像しているものではなかった。
「…じゃあ物理教えてくれよ。全然、分かんなくって」
「……えっ!?」
…ちょっと待ってよ。…俺とのアツ~い夜は?
だから哉太は再度聞き返したのだ。しかし返答は虚しいもので…。
「夜の恋人としての行為は―」
「そんなのよりも物理と…あと数学も。頼むよ~全然分からないからさ!」
目を輝かせて自分の…哉太の為に勉学に励む恋人を押し倒せるほどの度量を持っていた哉太は居なかったのであった。
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