不幸ヤンキー、”狼”に定められる。【3】

1/1
前へ
/127ページ
次へ

不幸ヤンキー、”狼”に定められる。【3】

「なんで…、心ちゃんの居場所が…ここだって…?」 「どうして…、分かったの?」  驚く様子の幸と心とは対照的に哉太は差出人に書かれていた人物に怪訝な顔を見せる。哉太はこの人物に1度会ったことがあるのだ。しかも印象も最悪であったので覚えていたのである。…しかし幸や心はまったくもってこの人物を知らない。 「哉太さん、この人のことを知っているのか?」  何かを知っているような哉太に幸が恐々として尋ねると彼は明らかに嫌そうな顔を見せたのだ。そして深く息を吐いては2人に向けてこの男の説明を始める。 「こいつは数珠 玉緒。この封筒に送付されているテーマパークの施設長兼社長だよ」  すると幸は封を開けてみることにした。そこには都心からアクセスの良い、大きな遊園地…いやの特別優待券であったのだ。最近出来た施設であったし、テレビをそこまで見なくとも、電車やバスの広告で宣伝されていたのを見たことがあった。それは心も知っていた様子で2人して感嘆で声を上げるほどである。  …哉太さん凄いな。こういう人とも付き合いがあるのか…。  ―だが目の前に居るへそ出しトップスの”狼”は怪訝な顔をして言い放った。 「まったく…またがこっちに来るとはね~…」  再度溜息を吐いては煙草を吸いたそうな顔をする哉太ではあるが、不安を抱いている様子の心を気に掛けて我慢をする。そんな彼の様子を見た幸は、少し笑って懐からミントのガムを取り出し哉太にあげるのだ。 「ほら、このガム噛んで落ち着きなって。…それか立ち話もなんだから座って茶でも飲む?」」 「おっ、良いね~。俺、幸が淹れてくれたお茶は好きよ~」 「はいはい。心ちゃんもそうしないか?」  すると心は不安げな顔をしつつも気に掛けてくれる幸に強く頷いたのであった。  テーブルに座り前茶を頂く哉太と心。相変わらず幸の淹れてくれた茶はとても美味しかった。苦みというより深みがあって、うまみを感じさせる幸の淹れ方に胸を撫で下ろす。  癒されている2人に幸は送付されていたテーマパークのチケットを手に取っては裏面の記載を見る。そこには『特別優待券:最大5人まで可』と書かれていた。  …遊園地か~。ふ~ん…、行ったこと無いな~。  しげしげとチケットを見る幸に哉太は前茶を飲み干したかと思えば元気よくおかわりを要求するのだ。 「花ちゃん~、おかわり~」 「…まったく」  そして程よく冷ましたお湯をつぎ足し、数分置く。その間に満足げ表情を見せている哉太へ問い掛けるのだ。 「そのってそんなに性格が悪いのかな?」 「え!???」  幸の発言に衝撃的な顔をする哉太に疑問を抱いる様子だ。だから幸はそのような経緯に至った説明をする。 「だって哉太さんこの差出人には会えたことはさ、そこまで嫌じゃなかったのかな~って思って…」  そのような憶測をした幸に今度は心が安堵した様子で彼に尋ねるのだ。 「幸君、それほんと? 哉太君って、人嫌いなの?」 「うん。かなりの人嫌いだよ。年下は最近は平気らしいけれど…すごい人嫌い」  幸の説明に哉太は反論が出来ないでいるが、この差出人…数珠 玉緒に関しては勘違いをしている2人に訂正をするのだ。 「極度は余計なんだけど…? こんな胸糞悪い奴を嫌な奴と思わない花ちゃんや、勘違いをしそうになっている心の為に教えるよ。…こいつのことをさ」  すると哉太は思い出すように語り始めた。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加