不幸ヤンキー、”狼”に定められる。【6】

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不幸ヤンキー、”狼”に定められる。【6】

「そんなことがあったのか…。それは嫌な奴だな…」  哉太の昔話を聞いて唖然としつつ幸は流れる動作で茶を淹れると哉太に手渡した。すると哉太は礼を言ってから啜る。しかしある疑問は感じていた。 「あの時、アイツが俺を狙っていたのは把握出来ていたから俺も警戒をし続けていたのだけれど…まさか、”狼”が消失したこころを…ね~?」  心に目をやる哉太ではあるが彼女は少し目を伏せて茶を飲み干す。だが心を信じている幸は疑い深い哉太を遮るような言い方をした。 「どうしてなのかは知らねぇけど、今回は心ちゃんが危害を加えられそうになっている。哉太さんじゃない」 「そりゃあそうだけれどさ~…」 「心ちゃんはなにも関係が無いだろ?」  幸の問い掛けに哉太は納得がいかない様子だ。しかし心は分かっているような反応を見せて口を開けては閉じての繰り返し。  ―しかし彼女が見せた言動は様子見かのような反応であった。 「…2人にはことはあるけれど、その前に…」  ―このテーマパークへ行きたいです。 「……っえ?」 「って、無理だよね。あっ、いや、分かってはいたのだけれど…このテーマパーク行ったことが無くて…」  少し恥ずかしそうにして謝罪をする心に幸は唖然とし、哉太はにんまりと笑ってからこのような”約束”を取り付けるのだ。 「ふ~ん、やっぱり隠していることはあるけれどこのテーマパークには行きたいと…」 「ううん! 哉太君の嫌な相手だし、2人に隠しているのは本当だから、お父さんに会う前に―」 「いいよ~。そっちの方が楽しそうじゃん?」 「…えっ、いいの?」  恐る恐るとした様子で哉太を見る心に彼は微笑んだかと思えば、心の頭を撫でた。心の髪も艶やかで触り心地が良い。呆然としている心に哉太は手を離したかと思えば、右手の小指を差し出した。 「じゃあ指切りげんまんね~。ほら、花ちゃんも小指出して?」 「あっ…うん」  哉太の指示に幸も慌てて小指を出し少女と約束を取り付けた。すると指切りげんまんの音頭を取りながら離された指に心は少し微笑む。 「ありがとうございます…。このテーマパークに行ったら、ちゃんと2人に言うから…」  嬉々とした様子で笑い掛ける心に幸も嬉しがるが隠しごとについては気にはなっていた。  …心ちゃん。何を隠しているのだろう? もしかして…。  ―”狼”の能力が消えていないとか? 「まぁでも、の花ちゃんも居るし~。それに俺も居るしさ~。心配だったらあの白髪もやしでも誘って行ってみよ~よ!」  哉太も気分転換が出来るからかはしゃいでいる様子であったので幸は息を吐いては苦言を呈す。 「怪力チンパンジーは余計だ。…まぁ罠も承知だろうけどさ、心ちゃんが行きたいのなら行こう…俺も行ってみたいしさ!」 「えっと…ありがとうございます。凄く…嬉しいです」 「こらこら、こころ~。敬語だよ?」 「あっ、ごめん…」 「ははっ。こころも早くこの状況に慣れないとね~」  はにかみながら笑えば哉太に心はまた恥ずかしそうに笑みに零した。その笑みを見られるだけでも、幸は先ほどの疑惑が薄れていった。しかし心は茶を飲み干してキッチンへ行ってマグカップを洗ったかと思えば、彼らへ手短な挨拶をしたのだ。 「じゃあお父さんの面会に行ってきます!」 「おう~。いってらっしゃい~!」 「こころ気を付けてね~!」  幸と哉太が玄関まで送り心を見送ると彼女はお茶目で大人のような気遣いをしたのである。 「…私が居ない間にちゃんとラブラブしてね!」 「……っえ?」 「じゃあまた!」  ―――ガッチャン…!  ドアを閉めて心が行ったのを確認してから哉太は幸に抱き着き耳元で囁くのだ。 「じゃあお言葉に甘えてシよっか?」 「あんたは…また…」  くすぐったさを感じる敏感な耳元のおかげで幸は態勢を()じらせる。すると哉太はさらに彼の耳元に息を吹きかけて誘惑をするのだ。 「…ここからは大人の時間だよ?」  哉太は幸の耳を甘噛みしては甘い時間を堪能しようと幸に迫る。哉太の余裕の無い表情に幸は応えるように軽く頷くのだ。
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