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不幸ヤンキー、”狼”とぎこちなくなる。【終】
―そして幸と合流し…現在は掃除中。せっせと働く幸に哉太は話し掛ける。
「花ちゃん~。掃除なんか放っておいて…俺と一緒に寝よ~?」
…ちなみに寝るって”エッチ”の意味だけれど!
だがこのハニートラップは防がれてしまう。なぜならば幸は見向きもせずに一心不乱に掃除に熱を抱いていたのだから。
「…なに言っているんだよ。その前に掃除だろ。…こんなところで寝られるかっての」
拭き掃除をし、掃除機を掛けてごみを分別する幸の一生懸命な姿に負けて…1回目は敗北。
エプロン姿で料理をする幸に哉太は注意を逸らすように…彼の尻を触った。
「んひゃっ!?? …なんだよ、いきなり―」
驚く幸に哉太はなぜか上裸になっており、そのまま幸にキスをする。
―――クチュウゥ…プチュゥ…。
「ふぅん…んんぅ…!」
深いキスに幸がくらりとしてそのまま倒れ込もう…とすれば、鍋がグツグツと怖い音を立てていた。
―――グツグツグツ…ゴポォッ!
「あぶっな!!」
「えっ…?」
寸での所で火を消して目を覚ます幸はやる気モードの哉太へ鶴の一声を掛けたのだ。
「あんたもそんな格好しないでとりあえず服を着ろ。…危ないし火傷するぞ?」
眼光を鋭くさせる幸に哉太はあからさまにしょげて謝罪をする。
「あっ…はい。花ちゃん、ごめん…」
「まったくもう…」
素直に謝って哉太は服を着て食事を取ることにした。…2回目の敗北。
…いやいや、本番はこれから。よーし!!!
夕飯が終わり哉太は意気込んで幸に向き直れば…幸は教科書類をダイニングテーブルに置いていた。ズッコケる哉太に幸は不思議そうな顔をする。
「なにしてるんだ? 勉強教えてくれる約束だろ?」
さすがに哉太の、変態狼の堪忍袋が切れてしまった。…彼は元々、欲、いや、”性欲”に関しては凄まじく欲しているのだから。
「…花ちゃん、ふざけてるの?」
「えっ?」
唖然とする幸に哉太は彼に深い口付けをする。
―――グチュウ…プチュウ…クチュリぃ…。
「うぁっ…、か…なたさん、…また、なんで?」
唇が離れ幸が問い掛ければ、哉太は少し不貞腐れた顔をしている。
「幸は淡白すぎるよ。勉学に励むことは良いことだけれど、恋人としてこういうスキンシップから入ってエッチをすべきでしょ。普通は?」
―しかし彼の思いは未熟な彼には通用しない。逆に軽蔑な瞳で、態度で示したのだ。
「…あんた、俺をそういう目でしか見てないの?」
妥当だが、愛している恋人に蔑むような侮蔑されるような視線が送られた。普段であればどうってことは無い。全然へっちゃらだ。…でも相手は愛しい恋人。…そんな彼に向けられた冷たい視線は哉太には辛すぎた。
「そんなわけじゃないけどさ。…俺は恋人として―」
「俺の今の大事な期間は勉強だ。…あんたとの行為よりこっちの方が大事だ」
幸の言葉に哉太は驚いてから少し悲しげな顔をする。そんな彼に幸は気になるものの発言してしまった言葉は取り消せない。すると哉太は哀愁の瞳をしてから幸の頭を撫でた。
「…勉強は教えるから、ちょっと待ってて。…煙草吸ってくるから」
ふらふらと出て行ってしまう哉太に幸は心配そうな声を掛ける。
「えっと、その、俺も悪かったから。…だから、その…」
だから哉太はお返しにも幼い青年相手に返してしまった。…今の自分の気持ちを。幼い彼だからこそ言ってしまった…本当の気持ち。
「いいよ、別に。…最近の幸は俺を家庭教師としてしか見てないんだね。…俺をただの道具で都合の良い人間としか見ないんだね」
「それは違うよ! そういう意味じゃ―」
「もういいからさ、当たってごめんね。…少し夜風にでも吹かれてくる」
そしてベランダへと出て行く哉太の…寂しげな狼の姿を見て、幸は自身の犯した何かに気付き後悔を抱いた。
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