不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【5】

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 幼い少女を抱きかかえた状態で、背中に大きな翼を生やした赤い髪色の天使は意識を集中させ、自身に生えている両翼を制御しようと試みる。初めは安定せずに落ちそうになったりもしていたのだが、さすがは学校1の不良ではあるが学校1の運動神経の持ち主だ。すぐに飛んでいる感覚を身体に覚え込こませ、大きく翼を広げ空を駆けるのだ。そして少女を……心を守るように両手でしっかりと支え、少し羽を縮ませては伸ばすように()けて行く。赤い天使……いや、幸の飛行テクニックに心は自身の心を躍らせた。 「すごい幸君! 見てよ、建物が小さいよ! 豆粒みたい!」  大空を羽ばたいているので当然、下を見れば巨大なパーク内が一望できるほどだ。普通であれば落ちそうになる恐怖感に駆られるとは思うのだが、抱きかかえられている少女は違う反応を見せている。興奮したように笑いかける彼女に幸は笑つつも、少女の身体をしっかりと離さぬように胸に抱いた。  そんな彼に心はまた嬉しくなって笑う。だが彼女の心情が分からない幸は疑問を持っているようだ。
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