不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【5】

4/6

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
 ――それは哉太が見ている、目で見ている映像を自身の脳内に送るというものだ。文字の方が負担は軽いのだが、哉太が伝えられる状態かどうかは分からない。だったら映像ではなく、1枚の絵のように哉太から伝われば場所が把握できるかと思ったのである。  彼女は必死に願いを込めた。そして意識を集中させるのだ。 「哉太君、お願い。助けさせて!」  すると心の脳内に1枚の写真が伝わった。  ――哉太からだ。伝達できたということは哉太は無事であることは確認できる。 「良かった。哉太君、無事みたい!」 「それは良かったよ……、って危ない。意識しないと落ちちまうな……」 「一旦降りたらどうかな?」 「……そうする、か」  嬉しそうな声を出した心に幸は飛ぶことを止めて緩やかにブレーキを踏みながら観覧車の上に止まった。なぜか動いていない観覧車に疑問を持つがそれよりも心が掴んだ情報の方が重要だ。だから幸は心へ問い掛ける。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加