不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【6】

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 監視カメラから見えた赤い髪をなびかせた色黒の……いや、愛しくて愛しくて堪らない恋人の存在に、哉太は唖然してしまった。両翼を生やしたその青年の姿は普段と打って変わりとても儚げで美しいと考えてしまうほどだ。そしてその大きな翼はとても力強い生命力を感じさせるほどだが、それでも尊さを感じてしまうのはなぜだろう。―そんな幸の姿と彼に抱かれている心の姿を見て、意識が明瞭になってきている哉太は悠然と椅子に腰掛ける玉緒に啖呵を切る。 「てめぇ、幸やこころに手を出したら殺すからな」 「お~、怖いな~。さっすが最強の”狼”や。……下手したら殺されるなぁ~」 「今はなぜか使けど、お前の首をへし折れることは出来る」 「じゃあその前に……あんたの首でも貰おうか?」  こちらも低い声で視線を向けられる玉緒に哉太は頭を巡らせる。能力を使用できぬように拘束もされているがそれだけでは無い。実際、哉太は手を使わなくとも音さえ響ければ能力を行使出来る力があるのだ。……にも関わらず、拘束されている間に色々と試し模索したものの、能力が使えないのだ。
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