不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【7】

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 図星を言い当てられた幸は顔を真っ赤にしてしまい、今度は着陸する際にこけそうになってしまう。しかしさすがは運動神経1の青年、上体が前のめりになるのを翼の反動で背筋を伸ばせさせた。  ―フライの”狼”としての能力の”飛行”と哉太の”狼”としての能力である”有機物や無機物に対しての磁力の”を応用した技を使用したのだ。理屈は分かっているかどうかは知らない。だが心の能力の手助けで幸は2人の相容れぬ能力を制御することに成功しているのだ。  ―制御できなければ磁力が密着して翼も開かず飛ぶことさえも出来なかっただろうに。 「あ…あぶねぇ。い…一応……セーフ……。心、怪我はないか?」  抱きかかえていた心をゆっくりと降ろしたものの、まだ顔が真っ赤な幸に心はおかしげに笑う。しかし心も自分の発言のせいで幸に怪我をさせてしまいそうになったり、使い慣れてないだろうに能力の制御をしてくれたり、それでも自分を心配してくれたりというので申し訳なさもあった。だから目を伏せて謝罪をした。 「大丈夫だよ。…幸君ごめんね?」 「あ…それは、まぁ…」  だが次の言葉で幸は顔をさらに紅潮させ、慌てたのだ。 「私、茶化したつもりは無くて…。私が来てからはなかなか出来なさそうだったし…ごめんね。私ももっと2人に気を遣えばもっとなことが―」 「ストーーーップッッッ!!!!」 「え?」 「心はそういうのは気にしなくていいから!! というか…心の歳で、というか! 小学生の女の子が、俺達の…その…そういうのは、教育に悪いし!!!」 「あれ、そうなの?」 「そうだ! それに俺も最近になって…そういうのは…その…」  しどろもどろになってしまう高校2年生の幸と、それでも平然としている小学5年生の心の考えの差。「この差は一体何だろうか?」と思うが、それでも彼女は(たぐい)まれなる平静さを見せていた。
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