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「お父さんや最近出来たお友達はよく言うよ。…彼氏が出来たら家かホテルで―」
「心、頼むから!!!! お父さんはともかく、そのお友達の言葉を信じちゃダメだからな!」
「え~、大人っぽい子なのに?」
…まずい。心をこれ以上、汚い大人の世界へ引き込んではいけない!
だから幸は彼女の両肩を力加減を弱くして真正面で言い放つ。まだまだ言葉足らずな部分はあるがこのように言いたいのだろう。…「自分のようなふしだらな世界へ、まだ行ってはならない!」ということを。
「それでもダメ!!! …全く、俺みたいな人生を送らないか、しっかり見とかないと…」
幸の言葉に心は首を傾げては一応頷いておくのだ。
「は~い。分かったよ~」
「いいな、約束だからな?」
「…約束」
幸のなにげの無い言葉に、少女は自身の心に明かりを灯された気がした。不器用ではあるが、愛されているという心情を得たからだ。それはこんなにも温かく安心が出来るのだと実感してしまう。
―だから幸と心は指切りをしたのだ。自分がもっと幼い頃、自分にしてくれた約束を想起し、心は嬉しさを感じる。しかも哉太や幸との約束まで思い出した。それほど自分は愛されていると、気に掛けてもらえていると思うと心があったかくなる。
―しかし事態は刻々と迫っていた。…幸が壊れるまでの時間が。
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