不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【終】

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 ―幸の脳内にとある情景が映った。それはフライやスピードが傷だらけになって気絶している姿。…そして、哉太が丈夫なロープで囚われ手も出せないでいるにも関わらず、玉緒が彼を殴りつけようとする光景。そして殴りつけられても哉太は動かずにそこに鎮座している…そんな衝撃的な映像。…哉太は動かないでいた。  ―幸のなにかが、心が、頭が…瞬間的に変化をしたのだ。  …哉太さんが、オニイサンが…動かない? シン…ダ、死んでしまった…の? …許さない。ゆるさない。ユルサナイっ!!!!!!!! 「…オニイサンを、助ける。こいつを…」  ―コロす。 「…幸君?」  すると突然、幸と心の周囲に青い彼岸花が咲き乱れた。驚きを隠せない心は彼に声を掛けるが、彼は一向として彼女に耳を傾けない。幸の手からするりとネックレスが落ち心は(すく)い上げて彼の心を感じ取り…驚いた。  …幸君の心が、が…、変わった???  咲き乱れて2人を道案内する絨毯(じゅうたん)に変貌した美しい彼岸花。それを幸はまっすぐな瞳で悠然と踏みしめた。  ―それは心にとって、とてつもなく哀愁を帯びているように感じた。
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