3 言葉で心に嘘をつきたくないから ②

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 車が会社の駐車場にたどり着く。 「会社……行かねえの?」 「え?」  運転席から神様に尋ねられ、ふっと意識が現実に戻ってくる。幸紘は荷物を手にのろのろと車から外へ出た。 「ユキ」  振り向くと運転席から助手席に神様が身を乗り出していた。助手席の窓がゆっくりと下がる。 「しばらく昼間は車借りる。使った分のガソリンは入れとくし、迎えはいつもの時間に来るから」 「あ、はい」 「あとな……」  神様は少し神妙な柳線形の目で幸紘を見た。 「ユキが望む事をしろよ」  ぱしゃん、という水音が幸紘の中に広がって、神様の言葉がすとん、とその胸を貫いた。 「前の質問の答え。ヒロって形に魂を縛られる必要は無いんだぜ」  助手席の窓を閉めながら、神様はそう言って運転席へと戻る。車は何度かエンジンを空ぶかしして動き出すと、駐車場を抜けていった。 「俺の……」  なにかが、幸紘の中で溶けていく。それが何か、幸紘にはわからないけれども、確かに。 「……望むこと?」  幸紘は去って行く車の後ろ姿をじっと見送って呟いた。
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